17歳、昼下がりの散歩道
「詩織はね、まだ赤ちゃんだった頃に父親を亡くしているの。皆、私を置いて逝ってしまうのね。」
自分の親も、夫も、娘さえも、自分より先に亡くなってしまっている彼女の気持ちを考えると、いたたまれない。
「お母様……。」
「その呼ばれ方は好きじゃないわ。私は沙織(Saori)。沙織さんって呼んで。」
「じ、じゃあ、沙織さん。」
そう呼ぶと、「よくできました。」と言わんばかりの笑顔を、彼女は俺に向けてきた。
俺は意を決して、口をもう一度開く。
「詩織さんのお葬儀、俺に任せてもらえませんか?」
そう言ってから、俺が自分のことについてほとんど話していないことに気づいた。
「すみません。急に変なことを言ってしまって……。俺、中卒社会人で、年齢は詩織さんと同じですが、職業は葬儀屋なんです。」
その説明で、彼女は大体のことを把握したようだ。