〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅

第14話 フラッシュバック

　
　メンバーと大道具スタッフが2人に駆け寄る。

「映画みたいだった〜」

　ジョンは目を丸くしたまま立ち上がる。

　トラブルも何とか立ち上がり、手で大丈夫と、言っていた。

　騒ぎを聞きつけた代表が駆け付けた。

　代表は大破したゴンドラを見て、ひとしきり怒鳴った後「俺がゴンドラと言ったから……」と、ゴニョゴニョ言い、そして「今朝は順調に行っていたじゃないか！」と、また怒り出す。

　ソンは、踊ったり身を乗り出す動きを想定していなかったと、代表とメンバー達に謝った。

　トラブルは聞いているのかいないのか、ジョンのシャツをまくり上げ、ウエストを見る。

　腰ベルトの位置に3センチ幅のミミズ腫れが出来ていた。

「うちの主力商品に！」

　その傷を見た代表がさらに怒り出す。

「トラブル、首から血が出てるぞ」

　ソンが指を差す首に手を当てると昨日の傷が開き、血が流れていた。

　ギョッとするメンバー達と代表。

「2人とも、イ・ヘギョンの所に行って来い！」

　代表が叫ぶ様に言った。

　その時、トラブルの様子が変わった。

　じっと、手についた血を眺めている。

　肩で息をし出した。

　気付いたセスが代表に目で知らせる。

「まずい……お前らも来い」

　そう言って、トラブルをスタジオから連れ出した。メンバー達は何の事か分からないまま付いて行く。

　トラブルは苦しそうに前屈(まえかが)みになりながら、代表に腕を掴(つか)まれて歩く。

　目が閉じられ、頭が下がって行く。

　体が震えて来た。

　時々、ビクッと頭を震わす。

「ヘギョンの所までは間に合わないな」

　代表はそう言って、廊下の準備室と書かれた部屋に皆を入れた。

　トラブルは両手で目を押さえ、全身がビクビクと痙攣(けいれん)をし始めていた。

　崩れる様に床に倒れる。

「対処法を見ておく様に」

　メンバー達にそう言い、床にしゃがんでトラブルの両腕を掴(つか)む。

　顔を覗き込み「俺を見ろ！ 目を開けるんだ！」と声を掛けた。

「目を開けろ！ ここは、そこじゃない！」

　トラブルの頭を掴(つか)み、顔を上げさせる。

「俺を見ろ。そうだ、それは過去だ。大丈夫だ。ここは大丈夫だ」

　トラブルは虚(うつ)ろな目で代表を見た。

　肩で息をしているが、痙攣(けいれん)は止まっている。