〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅

 まずは、ジョン役のトラブル1人でバク転をしてみせる。
 後ろのプールとの距離を充分に確認して、音楽に合わせて軽々とやってみせた。

 その様子をレストラン2階の控え室からゼノが見ていた。メンバー達を呼ぶ。

「この間のバスケの子、すごいですよ」

 メンバー達は窓に集まり、トラブルに注目した。

 ジョン役のトラブルの後ろに、他のメンバー役達が並ぶ。

 1フレーズ踊り、ジョンのバク転、そして1フレーズ踊ると打ち合わせを行う。
 
 音楽が流される。

 1フレーズ終わり、ジョン役のトラブルがバク転から着地した瞬間、誰かがトラブルの足を払い、トラブルはそのまま後ろに飛んで行った。

 バッシャーン!

 派手な水音をさせて、トラブルは背中からプールに落ちて行った。
 大道具スタッフ達は大笑いをする。

 正面から見ていたセスと、2階から見ていたメンバー達は驚いて腰を上げる。

 プールの水面の波が鎮まろうとしても、トラブルは浮いて来なかった。

 笑っていたスタッフ達の顔が強張る。

 その時、セスが「チッ」と舌打ちして、プールに飛び込んだ。
 しばらくして、セスとトラブルの手がプールサイドを(つか)むと、数名の撮影スタッフがセスを引き上げる。

 セスは「彼女にも手を貸して」と言いたいが、むせて言う事が出来ない。
 トラブルは自力でプールサイドに上がり、白いタイルの上で這いつくばったまま肩で息をしてた。

「タオル!タオル!」
「休憩だ!一旦、止めろ!」
 撮影スタッフが叫び、リハーサルは停止され、タオルはセスにだけ差し出される。

「お前ら……」
 セスは大道具スタッフを(にら)みながら向かって行った。
 
 
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