もう誰かを愛せはしない
「メイサ、どこ行ってたの?1人でうろつくのは危ないよ」



翔介は俯く私の顔を覗くと、心配そうに呟く。




「美佳が吐いちゃってダルそうだから、薬買いに行こうと思ったの」

「そうだったのか。じゃあ俺と一緒にコンビニ行こう」



差し出された翔介の手を握る。

翔介の手は温かかった。




「ところで元彼くんもいなかったけど、メイサと一緒だったワケじゃないよね?」



ギロッとこちらを睨む翔介。



あらら
全部バレちゃってたのね。



「…一緒だったよ。でもライハは心配してついてきてくれただけだよ」



キスしました…

とは言えず、罪悪感を感じた。




「…メイサはまだ、元彼が好きなの?」

「違うよ…。好きだったらショウスケと付き合ったりしないよ」

「じゃあキスしていい?」



翔介はシャッターが閉まっている店に私を押し付けると、チュッと触れるだけのキスをしてきた。



目の前には、シュンとした翔介の顔。



何でキスしたのに悲しそうな顔するのよ、失礼だな。




「…嫌だった?」



あぁ、それを心配してそんな顔してるのね。


本当に翔介は、年上には見えないよね。




「嫌じゃないよ」

「じゃあ嬉しい?」



嬉しい…?

いや、嬉しいとは感じなかったけど。



でもここで否定したらまた拗ねるから肯定してあげよう。



「うん、嬉しかった」



そう言うと翔介はパァッと眩しい笑顔を浮かべた。



喜怒哀楽が激しい翔介は、礼羽にはない可愛さを持っている。



礼羽はどっちかっていうとポーカーフェイスだからね。

笑うっちゃ笑うけど。




「ねぇメイサ、もう一回していい?」

「…キスって、していい?とか聞かないでするものじゃない?」

「だってメイサに嫌われたらヤダもん」



ヤダもん。って

もう、本当に子どもなんだから。




お子ちゃまな翔介に笑いながら、私は背伸びをして翔介にキスをした。
< 109 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop