もう誰かを愛せはしない
「…っ!…嫌っ!!!!」



礼羽との記憶を思い出していた私は、気付くと翔介を突き飛ばしていた。




「…ライハ…じゃない…」




匂いは礼羽なのに…
礼羽と同じなのに……


目の前にいるのは礼羽じゃない。




「…やっぱり俺はライハに勝てないんだね」


「ごめんなさい…。ごめんね、ショウスケ」



こんな時に泣くなんて卑怯だよね。


私が悪いのに、これじゃあ翔介が悪者みたい。




「…泣くなよ」




翔介は礼羽と同じ匂いがするけど

礼羽とは違う。



翔介に礼羽は重ならない。




同じ匂いがすると

翔介じゃなく、礼羽を想い浮かべてるの。




「いいよ。……俺もさ、実はメイサを利用してたんだよね」



翔介は服を着て立ち上がると、いきなり豹変したかのように表情を変えた。




「ライハって奴も俺と同じ高校だろ?前に美佳ちゃんが言っていた美人な元カノ、その子には一個下のライハって子を好きになったからってフラれたんだよね。

だからライハからメイサを奪ってやりたかった。

初対面のフリしたけど、メイサの事もライハの事も知ってたんだよ」




辛いよ…

酷いよ、翔介。









泣きながらそんな事言われたら、私の為に嘘をついてるとしか思えなくなるじゃない…。





「…ありがとうね…」



私が翔介に言えるのはそれだけ。




「何だよ、それ。……お願いだから悪者でいさせてくれよ。じゃなきゃ俺、虚しいじゃん…」

「ショウスケに悪役は似合わないよ」



いつも明るくて優しいそんな翔介に私は凄く救われたんだよ。


だから翔介を悪者なんて思わない。


思えないよ…。





だから
私なんかの為に泣かないで…。
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