もう誰かを愛せはしない
「ありがとう、ショウスケ。あの時も今も」


「いいんだよ。…そのかわり俺の為にもちゃんと幸せになるんだよ?考えてばかりいないで心に正直になればいいだけなんだからな。

今度は神崎メイサになった時に連絡するよ」




ありがとう

ありがとう、翔介。



たくさんたくさん、ありがとう。





あなたもちゃんと

幸せになってね?





「最後までいい人だったみたいね、川野先輩」

「…うん。いい人過ぎた」




知らぬ間に流していた涙を拭い、もう既に通話が切れている携帯の画面に微笑んだ。



すると再び携帯が鳴る。


何だか今日はよく電話が掛かってくるな。




そう思いながらディスプレイを見ると、知らない番号から電話が掛かってきていた。



もしかして礼羽かも!?


という淡い期待を抱きながら通話ボタンを押した。




「もしもし!?ライハ!?」



つい勢いで礼羽の名前を叫ぶと、電話越しに誰かが笑っている。


どうやら礼羽ではないらしい。




「…あの、どちら様ですか?」

「ワシだよ、メイサさん。礼羽のじぃちゃんだ」

「おじいちゃん?」

「あぁ、いきなり電話なんかして申し訳なかったね。前に何かあった時の為に礼羽からメイサさんの電話番号を聞いてたんだ」



電話を掛けてきたのは礼羽の祖父。



礼羽と一緒に行った時と、礼羽との同棲生活を終わりにした時の2回だけ会ったことのある優しいおじいちゃん。
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