もう誰かを愛せはしない
「すみません、神崎礼羽という医師は何処にいますか?」



おじいちゃんに託された手紙を携えて


翔介に教えてもらった礼羽の研修先の病院に駆け込んだ。





「神崎研修医なら今日は休暇のはずですが…何か急用でしょうか?」



息を整えながら、ナースステーションにいる看護士に礼羽の居場所を尋ねると、休暇だと告げられた。




「…いえ。いないならいいです」



まさか住所を聞いても教えてくれないと思い諦め、病院から出た。





同棲していたアパートには住んでないって言ってたし

礼羽の実家の場所はわからない。




それに研修医といえど医者になった事だから、新しい場所に住んでいるかもしれない。




…おじいちゃんなら知ってるかな?



そう思って、着信履歴に残っているおじいちゃん家の電話番号に電話を掛けた。



あれ、留守かな?




聞こえるのは、呼び出し音だけ。




「…どうしよう。何処に行けば…」



携帯を閉じてバッグにしまうと、その場に立ち竦んだ。






…名簿を見れる翔介に聞いてみる?


いや、それはダメだ。

翔介に頼ってばかりいられない。




それに翔介は礼羽の存在を教えてくれた時

『俺がしてあげられるのはここまでだ』

って言ってたもんね。





それにこれは

私がどうにかしなきゃいけないこと。
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