もう誰かを愛せはしない
「じゃあ、歳を取ってもう医者として働けなくなったら…一緒にあの家に住もうよ」



そう呟いたら、車内に沈黙が流れた。




え?何で黙るの?

私、変なこと言った!?




「ちょっとライハ!何か言っ…」



そう言い掛けるといきなり唇に温かいものが触れた。


それと同時に礼羽の匂いが鼻を掠める。




「…逆プロポーズすんなよ、メイサ」


「はぁ!?プロポーズは男がするものでしょ!何で私が…」



…あぁ

おじいちゃんの家に一緒に住もうって言ったから?



あれはそういう意味で言ったんじゃないんだけどな…。




「まぁメイサにプロポーズされても結婚してやらねぇけどな」

「何それ!」




いいですよーだ。



結婚出来なくても

礼羽と一緒にいられれば満足だもん。




もう私と礼羽を隔てるものは何もないから

不安になることもない。





「着いたぞ。ドア開けてやるから待ってろ」

「え?まだ目隠し取っちゃダメなの?」

「俺がいいって言うまでダメ」



礼羽はエンジンを止めると車から降り、助手席に回ってドアを開けた。


そのまま私の手を引いて何処かに歩き出す。





礼羽は何処に行こうとしてるのだろうか。
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