もう誰かを愛せはしない
「ところでどうした?バイトに行く途中か?」

「…ううん、違う。ただライハの姿が見えたから…」




今ここで


『ごめんね、ユウキさんの事とかもう気にしないからヨリ戻そう』


って言えたら、また礼羽と一緒にいられるかな?


都合が良すぎるかな。





「ライハ、私ね…」



でも…

ワガママだとしても
自分勝手だとしても


礼羽といられるなら、私は何だってする。




そう思って口を開いた瞬間、後ろから翔介がやってきた。



「メイサ、いきなりどうしたの?」

「…ショウスケ…」



タイミング悪すぎだよ、翔介。



礼羽の存在に気付いた翔介は、チラッと礼羽の事を見た。




「…あんた、もしかしてメイサの元彼?」



“モトカレ”という響きに礼羽はピクッと反応した。




「…元彼…か。そうだけど何?」

「あんたは本当にメイサの事好きだったんですか?」



え?

翔介は何を聞いてるの?




「好きじゃなかったら付き合わねぇだろ。そんなこと普通聞くか?」



礼羽と翔介は目を細めながら睨み合った。


綺麗な顔同士の睨み合いは迫力がある。




「あんたはメイサを傷付けた。メイサは本当にあんたの事が好きだったのに」


「何でお前にそんな事言われなきゃなんねぇんだよ」


「メイサの事が好きだから。俺ならメイサを傷付けたりしない」



翔介の言葉を聞いた礼羽は一瞬固まると、舌打ちをしてそのまま私達の前から去った。



礼羽を追い掛けようと思ったら、凄い力で翔介に腕を掴まれた。


振り解こうとしても、翔介の力には適わない。




必死に目だけで追っていた礼羽の背中は人込みに消えた…。
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