クローバー2~愛情~
「そろそろ帰らなきゃ」

美穂が残念そうにつぶやく。

「そっか。送るよ」

名残惜しそうに和希が言って。

「明日は、横浜中華街。来福門、11時に予約してあるから。7時に、クローバーにケーキ頼んでるから、楽しみにしてて」

「うん。あぁ、私もついに28かぁ」

「美穂って、可愛いから、そう見えないけどね」

「幼いって意味?」

「じゃなくて、魅力的、って意味」

唇を重ねる2人。

「ほんとに・・・急がなきゃ」

「だな」

小走りで練馬駅を目指す2人。東中野駅までは、そうかからないけど。

「ぎりぎりになっちゃたな」

「お父さんに顔見せないほうがいいかも」

「ごめんな。じゃあ」

「送ってきてくれてありがとう」

和希の後ろ姿を見送って、美穂はドアを開けた。

「美穂!!門限5分前だぞ!誰と・・・」

「まぁまぁ、お父さん。美穂もちゃんと門限前に帰ってきたんだから」

お母さん、ありがとう。そう心の中で言って、階段を上がる。

【お風呂入って寝るね。おやすみ、カズキくん】

【あぁ。こっちはまだ駅。おやすみ】

(来福門・・・かぁ。本当は2回目のデート、私が映画に誘って、ランチに行く予定だったんだよね。あれからずいぶん時間が経ったような気がしたけど、ついこのあいだ、だったんだ。あれから、色々なことがあったなぁ。)

美穂は、過去に想いを馳せていた。

(あの日は、拓也のことをカズキくんに知られた日。急遽、カズキくんのアパートでビデオを観て、ゴハンを食べて、そして・・・)

美穂は、あの日よりずっとずっと和希を好きになっていた。和希の真っ直ぐさを知るほどに、魅かれていく自分が分かった。その和希と、明日は念願の来福門だ。

待ち合わせは、9時半に新宿駅南口の花屋の前、と以前から決めていた。確認はしなかったが大丈夫だろう。そういや、和希はあの店でプチブーケを売りつけられたんだった、初めて会った日。

信じられないほどに、和希でいっぱいの毎日を送っていたんだなぁ。
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