新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~


【暁人】


「……」

深琴と社長は手を恋人繋ぎして、深琴の反対側に香純が歩いている姿を状況が半分程度理解できないまま、俺は遠ざかって行く3人を見つめる事しかできなかった。

今のその姿は香純も含めて、3人がとても親しい関係だとわかる。

「…行くぞ、暁人」

「えっ…?」

一月が先を歩き出す。

「あいつらのことを俺が話を聞いた範囲で教えてやるよ。…だから、お前も“八柳香織”との『関係』を話せよ」

「お前は関係ないだろ!」

そう強めの声を出すと、一月は俺を一瞬見つめてため息をつく。

「…確かに俺には関係ない。けど…“八柳香織”が『すべての始まり』で深琴が4年間も苦しんで来たのを俺は知ってる」

「香織が原因で深琴が…4年間も苦しんだ?…どういう事だよ!?」

「ウチに着いたら話してやるよ。だから…」

「…わかった。俺も話すよ。俺と香織の『関係』を…」

そう言って、俺は一月の家に向かった。



マンション。


「飲み物、水にしとくか?」

玄関からリビングに入りながら、後ろを着いて俺に一月が言う。

その部屋は男の1人暮らしには、充分過ぎほどの自分が住んでいるマンションの部屋とほぼ大差がない感じ部屋だった。

「適当に座ってろ」と一月に言われて、鞄を置き上着を脱いで目の前ある椅子にかけた。

「ほら、水」

「サンキュー」

そう言いながら、ネクタイを緩めて椅子に座った。

一口二口お互いに水を飲み、一月は携帯を操作してその画面を俺に差し出した。

「おい、一月。これ…」

「…一応言っとくが、俺の子じゃないからな」

その画面に映ってるのは笑顔の深琴と…男の子だった。

「4年前、深琴は大学を中退しておじさんの猛反対を押し切ってまで1人でこの子――夏輝を産んだんだ」

「ちょっと待て 。もしかして―――」

疑問点が繋がり、俺は口を開いた。

「そうだ、夏輝の父親は―――“高田夏彦”だ。そして、当時夏彦は深琴に実家の事を打ち明かせずにいたらしい」

「……」

「そんな中、『自分は婚約者』と言い張った“彼女”が金を一方的に押しつけて夏彦と別れるように強要したらしい。…深琴はその『嘘』にショックを受けて、誤解したまま4年間も1人で愛する男との息子を育ててきた」

「…じゃあ、本当に香織が言う『婚約者』は嘘で…事実上4年前から深琴が本当の『婚約者』だったのか?」

「夏彦の中では、そうだろうな」

「じゃあ、俺は…ずっとあいつの『嘘』に罪悪感を…」

…ダメだとわかっていた。

俺と香織の『関係』はいつか終わる関係。

最初は…そう割り切ってたはずだったのに…。

「…付き合ってたのか?八柳さんと…」

「…少なくも俺は大学時代からあいつ以外の他の女は抱いてない。…高校時代も深琴だけだったし…」

そう言って、一月に目線を向ける。

「一途なのは結構だが、お前と深琴のことは今でも腹が立つ!」

「10年前の事をいつまでも根に持ってるんじゃねぇよ」

「うるせぇよ…」

俺は懐かしい気持ちを思い出しながら、再び水を飲んだ。


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