新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~


腕時計を見ると、23時になろうとしていた。

「そろそろ、帰るわ」

そう言って、椅子から立ち上がる。

「…お前、そのブレスレット…有名なブランドじゃないか」

一月が言われたのは、腕時計とは逆側の腕につけている黒い革ベルトが使われて中央の金のプレートには小さくブランド名が刻まれているブレスレットだ。

「ああ、俺が『八柳グループ』に就職した時に貰った物だ」



―――3年前。(今年で)


『暁人、就職おめでとう。これ、就職祝いよ。私と色違いね』――とブレスレットを香織から貰った。

『お揃いのブレスレット』には、なんの意味もないだろう。

それでも俺も…、ゴールデンウイークや連休に度々一時帰国する香織も…、今でも身に付けている。


「…なぁ、暁人。このままでいいのか?」

玄関で靴を履く俺に一月が言う。

「あいつが“高田夏彦”じゃなく、“俺”を心から選んでくれたらーーー」

そこまで言って、一月のほうを振り向いて言った。

「その時は…どんな事があっても俺は香織を手離す気はないよ」

それを聞いた一月が「お前もか…」と呟いたが、俺にはその言葉が『誰かと似てるな~~』という意味だとは気づくはずがなかった。

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