【完結】私に甘い眼鏡くん
それよりも気になり続けていることがあった。
なっちゃんなら知っているかもしれない。


「そんなことより、もしかして太一が東雲くんを毛嫌いする理由、知ってる?」
「そんなことよりってねえ‥‥‥知ってるけど、勝手に話していいものかな。東雲から聞いてないの?」
「自分でもよく分かってないように見えたけど、実は分かってるのかな」


太一のことについて聞かれたあの日、彼は理由がはっきりしない悪意に悩んでいるように見えた。
考えていることがよく分からない人でもあるので、断言はできないけれど。


「それなら分かってないかもね。私さっき中学の時フラれたって言ったでしょ?」


あっさりと、かつ唐突に謎が解かれていく。


まとめると、太一が好きだった明るくて元気なみんなのリーダー的存在の女の子があろうことか根暗(自分を主張しない性格なだけだが)で当時は若干中二病が入っていた東雲くんに告白し、「悪いけど全然興味ない」と言われ大泣きした挙句、太一含む仲の良い友達に泣きつき、太一はそれをずっと根に持っているということらしい。

さすが中学生と拍手を送りたいほど実にくだらない話だった。


あと、若干中二病が入っている東雲くんが気になる。


「まあ、東雲も言い方悪かったとは思うし、あれは告白した側なら悲しいことは理解できるから、私も彼にいい印象なんて持ってるわけない。
けどさ、その子も必要以上に被害者ぶることが上手かったんだよね。太一が必要以上に東雲を憎んでるのは、ちょっと仕方ないのかもしれないけど」
「そっか」

おそらく、その子のことが相当に好きだったのだろう。
中学生という多感な時期だし、記憶の上塗りも相まって、彼の中の東雲くんはより
酷いフり方をしているに違いない。


「まあ、私が知ってるのはそんなとこ。あとは—」
「まだあるの?」
「ううん、なんでもないや。さ、そろそろ課題課題!」
「えー、何急に!」


さっさとリュックから勉強道具を出しているなっちゃんはこれ以上何も教えてくれそうになかった。

釈然としないまま、仕方なく私も勉強に取り掛かった。


こうして、様々な出来事があった夏休みは、静かに終わっていった。


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