【完結】私に甘い眼鏡くん

当日までのお楽しみだった私たちのクラスの実態が明かされると、全校生徒がこぞってやってきた。
またそれぞれが自分の女装をSNSに投稿して、飲食なしでも百円で撮影可能だよ!と添えておくと、激混みの店内に入れない人々が記念撮影だけでもとお金を払い写真を撮っていく。

彼らのピン写にツーショット。
すっかりメイドぶりが板についた男子たちは、サービス精神旺盛にポーズをとっていた。


「もっちー、卵溶けた!」
「オッケー焼きます!」


私はというと家庭科室でひたすらミニオムライスを作り続けていた。

もっちーは私のあだ名。望月だから、もっちー。

それはさておき、かなりのハイペースで卵の在庫がなくなりそうになった。
担任が車を出してくれて、東雲くんと買い出しに行っている。

業務用の冷凍ミニハンバーグを解凍しプレートを作ったり、特製ドリンクを作って運んだり、みんながてんてこまいだっだ。


休憩のシフトになって、力を抜く。なっちゃんはずっとレジをやっていた。
休憩はいいのかと聞くと、私はこの文化祭にかけているからと言われた。


「来年はみんな受験でしょ。私も多分文化祭中も勉強だと思う。焼き肉は今回しかとれないよ」


そう言ってまた会計に戻った。

申し訳ないな、と思いながらも休憩タイムの生徒の待機室に向かおうとすると、人の多い廊下の反対側から東雲くんが歩いてくるのが見えた。
今日はあまりの忙しさからろくな会話もしていない。


「東雲くん!」
「ああ」

あれから私たちはなにも変わっていない。
まるで一緒に花火を見たことなんてなかったような。
でも私は特に気にしていなかった。


「買い出しありがとね」
「大丈夫。休憩か?」
「うん。東雲くんは?」
「俺も。少し休んだら、他のクラスの偵察に行かないか」


少し視線を落としている。
要は、一緒に模擬店を回らないかというお誘いだろう。

だいぶ自分に都合の良い解釈をした私は、今日一番の声で「行く!」と返事をした。


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