【完結】私に甘い眼鏡くん
各々が当日まで準備に注力した。

低身長の私は男装してもきまらないから、と言っているのに、両日一時間ずつホールシフトに入れられた。
自分と男子一人分の衣装を作りつつキッチンシフトのためのオムライスを作る練習を毎日した。


男子はというと、鬼教官奈月にしごかれながら『女っぽい歩き方』『メイドっぽい言葉遣い』『裏声発声練習』『萌え萌えきゅんな言葉をケチャップで書く』など地獄のメニューをこなしていた。

唯一手の器用さと裁縫スピードを評価された東雲くんは女装免除になり、女子だらけの裁縫空間で黙々と衣装を作っていた。
女装が見たかったので残念だが仕方がない。


裁縫組じゃない女子は男子のパーソナルカラーやそれぞれにあったメイク方法を研究しつつ、スキンケアのアドバイスをしている。
当日は安い化粧品を調達し、メイクをしてくれる。また店内装飾の準備も彼女たちが進めてくれた。なんとも心強い。

また気になる子にメイクをしてもらいたいという男子の淡い期待が目に見えたが、それくらいの煩悩は見逃してやろうという教官のお情けがあったことを彼らは知らない。


こうして涙ぐましい努力の末、文化祭の前日準備の日に黒い弾幕の裏から照れくさそうに出てきた太一は、完全にメイドだった。


「女子じゃん!」「私より女子」「萌えた」「惚れた」「付き合いたい」


様々な感想が飛び交いつつどんどん出てきた男子の完成度の高さ。
みんなが感激の声を上げ、最高の士気で私たちの文化祭は幕をあけた。


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