【完結】私に甘い眼鏡くん
そんなある日、二年になって初めてのテストの結果が返ってきた。

東雲くんの実力が気になって、こっそり見に行く。
彼は文理共同の授業はよく寝ている。と思ったら普通に理系のみの授業でも寝ているらしい。

と聞いたのだが、なぜか物理が異様にできている。


「東雲くん……おかしくない……?」
「ナチュラルに覗くなよ‥‥‥。なにかおかしいか?」
「物理。なんでクラス偏差値70もあるの」
「んーなんか好きなんだよな、物理」


いつも通り眠たげに話す東雲くんの天才肌ぶりに舌を巻く。
数学も二位と三位が並んでいる。

理系クラスでこの成績とは、彼は相当理系に強いらしい。

しかし文系科目が悲劇的にできていないせいで中の上止まりの成績。
特に現代文が深刻だった。


「はい、俺のはもういいだろ」


彼は丁寧に紙を折り始めてしまった。
もう少し見たかったのに、とつい唇を尖らせてしまう。


「望月のも見せて」
「え、ちょ」


返事を待たない東雲くん。
机の上で二つ折りになっていた私のテスト結果が東雲くんの指でつままれた。


「おお」
「……つまんないでしょ」
「つまんないっていうか、普通に頭良いんだな」
「普通だよ」


普通オブ普通。
全ての科目で平均以上はとれているが、平均以上がとれているだけでなかなかぱっとしない。
まあ、数学で平均点以上をとれているのは確実にこの東雲大先生のおかげなんだけれど。


「現文二位は羨ましいし」
「現文はなんかできる。古典ひどいけど」


先生に古典もうちょっとできるだろと言われてしまった。無責任な教師だ、できたら苦労しないのに。


「終わり! こんな微妙な点じゃなくて折角だからすごくいい結果見てよ。次は頑張るから!」


すぱっと紙を引き抜くと、あ、と彼が声を漏らす。


「別に微妙じゃないだろ……それ」
「そう言っていただけるのはありがたいけどさ」


指定校推薦を狙っている身としては評定が気になる。よって偏差値も気になってしまうのだ。
私が唸っていると東雲くんは神妙な面持ちで言った。


「あのさ、望月」
「ん?」
「次のテストまで時間ないし、俺に文系科目を教えてくれないか」
「……もちろん、いいけど」


男子とテスト勉強。
いきなり身の丈に合わない、高いハードルに挑むことになってしまった。

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