痛み無しには息ていけない
今日の試食販売で紹介するソーセージは少し高級ラインの商品で、シンプルな味からスパイシーな味まで4種類の味がある。
レンジで温めたり、少し加熱するだけでパリッとジューシーに仕上がり、それだけでおかずの一品になるし、ワインとかの酒のアテにもなる。

スーパーの開店時間である10時と同時に、自分は売り場を回って消耗品を買う。
試食販売で紹介する商品や紹介方法…調理方法によっても違うが、申し送りが無ければ消耗品は経費で落として良い事になっている。
今回必要なのはソーセージに刺す爪楊枝と、ソーセージを乗せる紙皿、それとゴミを纏めるゴミ袋である。

開店と同時に入店してくるお客さんは少ないので、スムーズに買い物を済ませる。
レジで領収書を御願いしたら、打ってくれてる人が“お疲れ様です”と言ってくれた。

可動式テーブルの棚に入れてある鞄に財布を放り込み、持参したキッチン鋏でソーセージを4等分し、これまた持参したホットプレートをコンセントに繋いで温める。
ソーセージをホットプレートで温めたら、紙皿に盛り付けて爪楊枝を刺す。
今日はひたすら、その繰り返しだ。4種類も味のバリエーションがあるから、自ずとソーセージを温める回数は増える。


「いらっしゃいませー!新作のソーセージはいかがですかぁ~?」


好感度が高そうな感じで喋る。作業中も声出しは欠かせない。
それだけで注目を集めて人が来る時もあるし、有り難い場合はソーセージの焼き上がりを待って、その場で試食し、購入していってくれる方もいらっしゃるからである。
――この場合、“わざわざ焼き上がりを待ってるなんて、食い意地が張っている”とか言う悪口を言ってはいけない。それだけその商品に期待してくれている証拠なのだから。
…いや、普段の自分だったら、それぐらいは平気で言ったりするけど。

お客さんも全然も居ないし、新商品なので、最初の一口ずつ試食してみる。
商品のポイントを知る事は、それだけお客さんに商品をオススメしやすくなる。
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