あやかしの集う夢の中で
「雪菜の体が五つに分かれた……。

この技っていったい……」



愛理は雪菜が五つに別れたことに驚き、目を丸くしてつぶやいていた。



そしてそれとは真逆に雪女の雪菜が妖しく笑みを浮かべて、桜介にこう言った。



「坊やに今から素敵な夢を見せてあげる。

秘技、雪女の誘惑」



雪菜がそう言った次の瞬間、雪菜の体から細かい雪が吹き出してきて、雪がキラキラと輝く幻想的な空間が作り出された。



そして五体の雪菜はその幻想的で夢見心地な空間で、妖しくセクシーに笑いながら、桜介に近づいてきていた。



桜介はまるで魂を奪われたかのように、その幻想的な空間にいる雪菜に見とれ、戦うことを忘れていた。



辺りには雪菜の笑い声が響き渡り、その声を聞きながら、桜介はぼんやりと目を細めていく。



桜介が幻想に心を奪われていく危機的な状況に気づいた愛理は、そのことを桜介に気づかせるために大きな声で叫んでいた。



「惑わされちゃダメだよ、桜介!

その幻想的な雪女は味方じゃない!

舞ちゃんの夢をなくそうとしている敵なんだよ!」



桜介が愛理のその言葉にハッとして、やっと攻撃体勢に入ろうとしたとき、もう雪菜は桜介の目の前まで来ていて、桜介の体に抱きついていた。
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