あやかしの集う夢の中で
「見て、桜介。

あそこにものすごく大きな夢妖怪が倒れているよ。

あれって十メートル級以上だよ」



愛理が驚きの声と共に緑色の巨体の夢妖怪を指差したとき、桜介も遥か遠くに見える夢妖怪を目を細めて見つめていた。



「本当だ。

ものすごくデカい夢妖怪だな。

あいつを誰かが倒したのかよ」



桜介が思いつきでそう言ったとき、愛理が目を輝かせて桜介にこう言った。



「きっと時宗君だよ!

あんな夢妖怪を倒せるのって、時宗君しかいないもん。

もしかしたら時宗君たちと合流できるかもしれないよ。

そしたら、強い夢妖怪も怖くないよね」



愛理がうれしそうにそう言うのを桜介は不機嫌な顔で聞いていた。



確かに時宗は強くて頼りになる奴だけど、みんなが時宗ばかりを褒めるのがどうしても気に入らない。



それに時宗がイケメンだっていうのも腹が立つ。



神様は時宗だけをひいきして、時宗にたくさんのものを与え過ぎている。



桜介はそんなことを思って苛立ちながら、巨体の夢妖怪が倒れているところへと近づいていた。



すると、巨体の夢妖怪から少しだけ離れたところで、時宗とカノンの姿を見つけた。



時宗は地面に倒れており、カノンがそれを心配しているような雰囲気だ。



桜介はそんな二人の様子を見た後に、強烈な胸騒ぎがして、早口で愛理に話しかけていた。
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