あやかしの集う夢の中で
「これがお前の技か?

我の前では無力じゃな」



あやかし王がそう言って右手に力を込めると、愛理が放った電撃の矢がポキリと折れて、夢の世界の中で姿を消した。



あやかし王は体こそ小柄で子供のようだが、その紫色の顔は残虐そうで、他の夢妖怪たちの数倍の悪意を放っていた。



桜介はそんなあやかし王を改めて警戒し、愛理に小声で話しかけていた。



「敵は強いぞ、愛理。

今までの敵とは段違いだ」



「悔しいけど、そうみたいね。

私の技があんなにもあっさりと防がれるなんて……」



「協力して戦おうぜ。

オレと愛理の力をすべて使って」



「今回は桜介の意見に賛成するよ。

とても一人じゃ、あの敵を倒せない」



「お前たちは我を相手にこの今にも光を失いそうな夢を守れると思っておるのか?」



あやかし王はそう言うとニヤリと笑い、舞の大切な夢である直径五メートルの球体に目を向けた。



「お前らがどんなに足掻いてみても、この弱々しい光しか放たぬ夢が壊れればすべてが終わる。

そのときのお前たちの顔を我はどうしても見てみたい」



あやかし王はそう言って、右の拳を振りかざし、舞の大切な夢を見て笑った。
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