あやかしの集う夢の中で
「お前たちが夢妖怪と本当に戦う覚悟があるのなら、オレは今から如月舞の家に行っても構わない。

いや、むしろオレは早く夢妖怪を退治したくて体がうずうずしているくらいだ」



時宗がそう言うと、オカルト部の三人の表情に明るい笑顔が浮かんでいた。



「よし、これで舞ちゃんを助ける準備は整った。

我がオカルト部は舞ちゃんの夢に住み着いている夢妖怪を退治するぜ!」



そう言って、やる気の満ちた笑顔を見せている桜介を見て、まるで子供みたいだと愛理は思った。



純粋で単純でそれでいて友達思いで……。



桜介の心の奥の部分は子供の頃から変わっていない。



愛理はそんな桜介の変わらぬ魅力が表に出たとき、うれしくて笑っていた。



(桜介……、君はどこにでもいそうな普通の中学生に見えるけど、他の人にはない魅力があるよね。

私だけはそれをちゃんと知っている。

誰よりも近い場所で、ずっと桜介を見てきた私だから)



部室の中に春の暖かい風が入ってきた。



愛理はその暖かい風を感じながら、桜介の笑顔を見つめていた。
< 39 / 171 >

この作品をシェア

pagetop