あやかしの集う夢の中で
もしもこの危機的な場面に出くわしているのが時宗ならば、涼しい顔でこの危機を回避するに違いない。



桜介はそう思うと、自分が時宗よりも劣っていることを否定するかのように全身に力を込めた。



そして巨大な夢妖怪が桜介にこん棒を振り下ろそうとしたそのとき、桜介は敵に右手をかざして、炎の技を発動させた。



「これでもくらえ!

スーパー大炎上!」



桜介がそう叫んだ次の瞬間、桜介の右手から巨大な炎が飛び出していった。



そしてその巨大な炎は渦を巻くように回転しながら、巨大な夢妖怪を初めとする夢妖怪たちの群れを飲み込んだ。



「本当にあれが桜介?

ちょっと本当にスゴいんだけど……」



愛理は桜介が放った巨大な炎の威力に驚きながらつぶやいていた。



リアルな世界では平凡な普通の中学生だった桜介なのに、夢の中の世界の桜介はまるでマンガの主人公のようなスゴさと無敵感を出している。



時宗は夢の中の世界では思いの強い者が最強だって言ってたけど、だとしたら、桜介は誰にも負けないような強い思いを持っていたことになる。



でもそれはいつも桜介の近くにいた自分でさえも気づかずにいたことだ。



自分は誰よりも桜介を見てきたつもりなのに、まだ桜介のすべてを知らない。



愛理はそう思うと、桜介のことで自分が知らないことがないくらいに、桜介のことをもっとたくさん知りたいと感じていた。



桜介が戦っていた夢妖怪たちは、桜介が放った巨大な炎の中で溶けていなくなり、それを見たカノンがうれしそうに桜介に話しかけていた。



「桜介君はすごいですね。

本当に強くて無敵です!

まるでアニメの主人公みたいです!」



カノンはそう言うと、楽しそうに飛び跳ねた。



そしてその度に小柄なカノンの大きな胸がプルンプルンと揺れていた。



桜介はそれを見て、目のやり場に困り、照れながら少しだけカノンから目をそらしていた。
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