不細工芸人と言われても
俺は、ひとつ深呼吸をする。
このまま食事した後、俺はどうしよう。
酒を飲んだら、気も大きくなってなんか知らないうちにいいムードになって〜………とか。
いやいやいやそんなん考えるな、ほら肉が焦げるぞ。集中しろ。

ま、余計なことは考えるな。俺。
とりあえずカホとの今の時間を楽しもう。

「さ、いいかなー。冷蔵庫からワイン出して。一杯目は白にしよう。」
「うわー、ちょっとしたパーティーだね。」
カホと俺は向かい合ってテーブルにつく。
久しぶりにこんなコース料理を作った。

「いただきまーす。」
カホが一口頬張るごとに、「おいしー!」とか「天才ー!」とか言いながら食べる姿を見ていて、俺も嬉しくなってくる。
ヤバい。なんだよ、この幸福感は。
今日は、目はそらさない。
目の前にいるカホをじっと見つめていられる。

「やっぱり、外で会うよりこっちの方が良かったー。あ、高岡さんは作るの大変だっただろうけど。」
「いや。俺もこっちの方で良かったな。美味しいって言ってくれると作りがいがある。
デザートもあるからお楽しみに。」
「ホントに? しあわせー❤️」


胃袋掴む作戦で、イケるだろうか。
いや、そんな期待するんじゃあない。 わきまえろ。
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