不細工芸人と言われても
「デザートは、片付けてからゆっくり食べようか。」
「うん。そうだね。お腹いっぱい。少し置いてから堪能したい感じ。」
カホは嬉しそうに笑う。

キッチンに一緒に並んで、後片付けをする。
仕事のこと、番組のこと、共通の知り合いやスタッフのこと、いろんな話をしてそして笑う。
一緒に住んだら、こんな感じなのかな。
女と同棲はしたことないが、カホと毎日こんなふうに過ごせたらどんなに楽しいだろうか。

しかし、さっきからずっと思っているが、カホの屈託のなさ、無邪気な表情に、一抹の不安を覚える。
こっちはよこしまな考えが何度もよぎる。

黒い天使が囁く。
男、高岡創史、このままこの子を帰す気か?
早くベッドのある部屋へ連れて行くんだ。
ええい!モタモタしやがって!もう押し倒してしまえ!

白い天使が囁く。
ダメダメ。
せっかくこんなふうに親しくなれたのに、強引にそんなことしたら嫌われるよ。
歳上としてきちんとした大人の男として紳士的に振る舞うんだ。

黒。
さっきからムラムラしてるくせに。
我慢できないんだろ?その子と ヤリたいんだろ? チャンスじゃないか。
その後のこと?そんなのは知らん。欲望の赴くままに行くんだ!

白。
こんな純粋な子を傷つけちゃいけない。
お前の性欲のはけ口じゃないんだぞ。 汚すんじゃない。
幸運なことに、彼女はお前のことをすごく信頼し、慕っているようじゃないか。
まあ、君はそんな風にちゃんとした人間ではないのは知っているが、今回くらいはきちんとしようぜ。
彼女に幻滅されるのは嫌だろう?

と、そんな感じに俺の頭の中は、葛藤していた。

ここまではシナリオ通りなんだ。
この後、ソファで、用意しておいたデザートとワイン、照明を薄暗くしてムード満点の演出で。。。。


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