不細工芸人と言われても
ある日、10月の特番の撮影で局を出たところで、偶然あの嶋崎仁と鉢合わせた。
嶋崎仁は、俺たちコンビを見るなり、さわやかな笑顔で話しかけてきた。
「グリルチキンスターさんだ! 一度お会いしたかったんだ。スタイリストの嶋崎仁です。」
名刺をマネージャーと俺たち二人にさりげなく渡す。
さすが、自分のアピールと営業はスマートだと関心してしまうくらい嫌味がない。
マネージャーは、恐れ多いという感じで、あたふたしながら自分の名刺を差し出す。 ほんっと、こっちは格好悪いな。。。

「お二人と一緒にお仕事してみたいなと思ってたんです。 カドさんは、お笑いの中でも格好良くて若い女の子たちに人気だし、高岡さんも今はバイプレイヤーとして大人気だし、なんてったってお二人おもしろいし、私のショーに出てくれたら刺激的なものがやれるんじゃないかなって思ってたんです。」
マジか。。。
マネージャーはアワワしちゃっている。
「そ、そんなお話いただけたら、すごく光栄です。ぜひよろしくお願いします!」
相方のカドもポカンとしている。
「マジっすか。」
「……………。」
嶋崎仁は、俺の目を見て言う。
「桜山カホ、前に担当のスタイリストだったんでしょう?今、彼女、僕の部下で、よくチキスタさんの話するんです。それで、おもしろいなって。」
俺は、今知ったかのようなそぶりをするので精一杯だ。

時間が押していたのかあまりここでは話せず、慌てて別れるかたちになってしまったが、その後のマネージャーと相方の興奮っぷりはすごかった。

「スッゲー!もし、マジでこの話ホントになったらすげーよ!」
「カホ、でかした!彼女が営業してくれたようなもんじゃね?」

……………。すげー格好良かったな。嶋崎仁。

しかも、なんか最後の俺を見て話すのはなんだか意味深なようなそうでないような。。。。
いったい、カホはどこまであのイケメン上司に俺たちのことを話しているんだ。。。
いつでも俺は、斜に構えた考えしか出てこない。
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