不細工芸人と言われても
会いたい、でも言えない
カホと一緒の現場の残りの数カ月はあっという間に過ぎてしまった。
たまにやっていた小さなお土産も、こんな時に限っていいものが見つからない。

最後の日、みんなが、次のところでも頑張れよと小さなプレゼントを渡したり、花束を渡している輪にも入る気にはなれなかった。
何かプレゼントをあげたとしても、それが餞別のようになりそうで。

ちょっとした送別会で仲間内で飲みに行く事になっても、俺たちコンビは次の仕事があったから元々行けず、そのまま一言も交わさず別れてしまった。


仕事で会わなくなったぶん、俺はなぜだかマメにカホにメッセージを送る。

以前は、番組の撮影で顔を合わせることができた。
そこで面白いことを言って気を引いている気分になっていたのが、それがなくなると急に寂しくなったのか、どうでもいいネタをカホに送っている。

アイスの当たり棒を写メで送ったりとか、ロケで行った島のネコの写真を送ったりとか。
カホは、遅れたとしても必ずちゃんと返事をくれる。

付き合わせて悪い気もするが、あながちカホも楽しんでくれているような気もする。
まるでちょっとした交換日記みたいだ。
こうやってちょっかいを出して、少しでも俺の存在をアピールしたいというところは本当に小学生の頃から変わっていない。 ガキ丸出しの36歳である。

会いたい。
その一言が言えずに、悶々とする。

カホが気安く「遊びに行っていい?」とメッセージをくれればいいのに、忙しいのかそれとも遠慮しているのかそういうことは送ってこない。
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