不細工芸人と言われても
二日酔いの誕生日に
その日、なんだかんだ口喧嘩しつつもよしのと朝まで飲み明かし、フラフラになって朝帰りをする。
こんなこといつまで俺はやってんだか。
深酒をして後悔して、ベッドに倒れこむ。
今日はオフだったから1日中寝ていられる。 こんなむちゃくちゃな生活していたら、早死するよなあ。もうおっさんなんだし。

丸一日中寝て、気分の悪い中夕方に眼が覚めると、沢山のメッセージがスマホに来ているのに気がつく。
あ、そうか、俺、今日誕生日か。
親や友達、相方やマネージャー、仕事の仲間からもおめでとうとメッセージが来ている。
その中に、カホからのメッセージがあるのに気づき、手が止まる。

「高岡さん、お誕生日おめでとうございます。すっかりご無沙汰しちゃっていますが、また今度遊びに行きたいです。カホ」

俺の誕生日なんて、なんでカホは知ってるんだよ。
そう思いながら、そのままカホの番号を自然とタップしていた。
5コール目で、カホが出る。

「もしもし」
懐かしい。カホの声だ。
なんだよ、何も言葉が出てこない。
俺は、なんでカホに電話をかけているんだ。。。
蓋を閉めていた気持ちが一気に溢れそうになるのがわかる。
ゆっくり目を閉じて、電話の向こうの息づかいに耳をすます。
会いたい。 喉元まで出そうな言葉を飲み込む。

「高岡さん?」
カホの明るい声。
「………ああ。」
「お誕生日、おめでとうございます。」
「ありがと。なんで、カホちゃん俺の誕生日知ってんの?」
「うん。たまたま、あ、今日なんだって知って。高岡さんどうしてるかなあって思って。」
「……………。」
「高岡さん、元気ないね。」
「うん、ちょっと二日酔い。」
「あ、昨日とかお祝いでみんなと飲み歩いたんですか?」
カホは、コロコロと笑って言う。
「そんなんじゃないけど。 今、仕事中だった?」
「ううううん。今日は早く上がれたので、買い物がてら青山プラプラしてるとこです。高岡さんは?」
「今、起きた。」
「あららー。相変わらず不摂生だね。」
「うーるせ。。。」
「今から、そっち遊びに行っていいですか?」
「……………いーけど。」
「あ、でも、二日酔いなのにうるさいのが来てメーワクって感じかな?」
「………そんな事はない。」
「じゃあ、少し買い物して行きます。さっぱりしたものなら食べられる?」
「ああ、そうだな。」
カホに、久しぶりに会える。
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