不細工芸人と言われても
こんな情けない俺に
海沿いの道を車で走らせる。
天気が良くてキレイに晴れ渡っている。
最高かよ。
「明後日仕事だから、明日には戻らなきゃだけど、カホは?」
「私は4日からだよ。」
「じゃあ、あと1日ゆっくり近場まで戻ってどこかいいところに泊まるか。」
「マンションに戻るんでもいいよ。その方がゆっくりできるし。また仕事忙しくなっちゃうとしばらく会えないでしょ。」
「明後日から、毎日お前の帰るところは俺の部屋。帰ったら、スペアキー渡すから、少しずつでいいから荷物運べよ。」
カホは、少しびっくりした表情をしてから嬉しそうに微笑む。
「うん。」
「せっかくだから、もう一泊しよう。こんな天気良いんだし。」

というわけで、湘南の海沿いのホテルのスイートをいきあたりばったりで当日入りする。
こんな時、芸能人になってよかったとつくづく思う。
カホはすごく戸惑っていた。
「そんなにビビらないの。俺の奥さんになるんだからさ。新婚旅行みたいなもんかも。この後お休みだって取れるかわかんないんだしさ。」
カホはコクっと頷いて
「わかった。ありがとう。こんな素敵なところ用意してくれて。」
っとに、かわいいなあ。
こういうちゃんとした感覚を持っているところに安心する。
俺は笑って、
「ホントはテント張って猿とカピパラと温泉入るつもりだったんだもんな。」
「そうだよ。どう考えたって、スイートに泊まる感じじゃないでしょう?」
とアウトドアの格好でクルクル回る。
「いいんだよ。そんなの脱がしちゃうから関係ないもん。」
そう言って、俺はカホを抱き寄せる。
昨日からの何度目かのキス。身体の中心の奥の方から沸き上がるように俺はまた欲情する。
カホは俺をたしなめて囁くように言う。
「お風呂、入ってから。」
「じゃあ、一緒に入ろう。」
「え、恥ずかしい。」
「今さらだろ。」



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