不細工芸人と言われても
周りの反応が
東京に戻って、トントン拍子に事は、運ぶ。
思い立ったらすぐというのは、俺もけっこうそういう方だが、カホもアグレッシブに動くヤツだった。

カホは、シンガポールにいる両親にアッサリとビデオ通話で報告し、ついでに俺もそれで顔を合わせてご挨拶をするというなんというか先を行っている家族だった。
まあ、でも俺の方の家も、結局とりあえずは電話で報告したんだが、もうこっちは、諦めの境地というか、そんな大事なことも電話で済ますような息子だわな、という反応ではあった。

その週末には、カホがそのまま婚姻届を出してくれることになっていた。

コンビで仕事始めの日。
楽屋に入ると、相方のカドスケがもうきていた。

「チーす。」
顔もあげずに、台本をパラパラめくってタバコをくわえている。
「おまんは、明けましておめでとうぐらい言えや。」
「他のスタッフにはちゃんというとるよ。お前にまで言わんといかんか?」
「もうええわ。」
こいつには、1番に報告しなきゃだよな。
向かいの会議テーブルの椅子に俺が座ると、カドスケは何気なく俺の方を見て目をそらしてから、ん?という感じで俺を二度見する。

「なに?」
「…………いや。」
と相方は首を振ってまた台本に目を落とす。
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