君がいるだけで、世界は輝く
桜喜vr.

 スカイツリーに行ってから、"水川さん"と
よくお昼を食べるようになった。

…でも、いつか、「瀬奈」って呼んでみたいとか勝手に思ってる。

今日も、"水川さん"とお昼ご飯食べよ!

「ねぇねぇ、桜喜くん!」

 はぁ、名前も知らない女子から、
話しかけられるのなんてしょっちゅうで、
うんざりしている。

「なんだよ」

 いっつも甲高くて甘ったらしい声で、
話しかけて来て、俺に構ってよく飽きないなと思う。

「きゃー!返事してくれた!!」

 めんどくせぇ、早く"水川さん"のところに
行きたいのに…

「だから、なんなの?うざいんだけど…」

「あ、あのね、今日、一緒に、お、お昼
 食べて欲しくて…駄目かな…」

 はぁ?ふざけるなよ、お前の為に時間を
割くわけねぇだろ。

「嫌だ」

 いくら怒りが溜まってたとはいえ、
さすがに強く言い過ぎたらしい、相手は、
みんなが見ているのに、おもっいきり
泣き出した。

「はぁ、何なんだよ…」

「っ、ごめんね?私となんか嫌だよね…
 水川さんの方がいいよね…ぐすっ、」

「は?なんで、"水川さん"って…」

 こいつら、ずっと俺のこと見てたのか?
"水川さん"のことも?

じゃあ、こいつらに危害を加えられるかも
知れねぇじゃん…

何なんだよ…、いや、俺のせいだ…

「あのさ、条件がある…」

「え?じ、条件?」

俺が考えたのは、一回だけ、一緒にお昼を
食べる代わりに、彼女に危害を加えないことを約束させた。

正直、そもそも俺に近寄らないで、
欲しかったけど、多分、見返りも大きくなると思ったから、それは、言わなかった。

「え?ほんとに、一緒に食べてくれるの?」

「…たった、一回だけ、だからな…」

一回だけ、一回だけ、こいつらと食べれば、
"水川さん"は、傷付くことなんてない。

「うん!ありがとう!桜喜くん!
 あとさ、お、桜喜って、呼んじゃ
 駄目かな…?」

 は?こいつらは、図々しいったらありゃ
しない。

「なんか、言った?」

「っ、そ、そうだよね、ごめんね?
 桜喜くん…」

俺の、怒りの剣幕に押されたのか、これ以上でしゃばった事はしないだろうと思った。

「はぁ、"水川さん"ロスになりそう…」

「っ、早く、早く〜!桜喜くん!遅いよ〜」

「…ん…」
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