二度目の初恋
色々あって高校を転校することになり、わたしは産まれ育った立葵市南町に戻って来た。

といってもわたしの記憶は10歳に目覚めた時から今日までの5年間のものしかない。

詳しい理由はわたし自身も聞かされていなくて、とにかく事故に遭って記憶喪失になってしまったとそういうことらしい。

その事故の日にわたしが搬送された病院はこの市の一番大きな病院だったのだけれど、わたしはより専門性の高い治療を受けるために数日後には都内の大学病院に転院した。

自分の名前も家族の名前も友達の名前も忘れてしまったのに、日常生活を送る上で最低限のことは覚えていたから、リハビリは順調に行くのだろうと思ったのだけれど、そう甘くはなかった。

わたしは利き手だった左手に麻痺が残り、左の視力はほぼゼロに近い。

わたしの世界は一般の人の半分で、記憶は半分以下。

突きつけられた現実を受け止めながらわたしは必死に生きてきた。

もがいてあがいて生きてきて...今がある。


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