愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
さすがに今のは、どんなにポジティブな私でも傷つく。
確かに、お互い相手を好きで結婚したわけじゃない。
紙一枚で繋がれた、他人同然の関係だ。
でも、そんな相手とでも家族になろうと思うのはいけないの?
少しくらい歩み寄ってくれてもいいじゃない。
嫌がって拒まなくたっていいじゃない。
どうしてこんなに、上手くいかないんだろう。
私はただ、ただ――。
「はっ!ってここどこ!?」
家を飛び出ししばらく走り、気づけば私は森の中にいた。
思えばあの家に来てからまともに外に出たのは初めてだ。
周りを見ても木々しかないし、自分が今家からどのあたりにいるのかもわからない。検討すらつかない。
どうしよう、そうだ地図アプリで……ってスマホは家だ!
なにも考えず飛び出しちゃったから!
どうしよう、完全に迷った……!
ひとりオロオロと右往左往していると、道のくぼみに足をとられ私は思い切りその場に転ぶ。
「いったぁー……」
地面に顔と足を勢いよくぶつけ、伏せた体制のまま痛みにしばらく動けない。
ひとりで飛び出して迷子になって転んで……私、なにしてるんだろ。
名護さん、今頃呆れてるかな。
私が怒っていやになったところで、彼はなんとも思わないかもしれない。
……それならまだマシで、じゃあ離婚だ、なんて言い出したら杉田屋の買収話もなくなるかもしれない。
せっかく冬子さんたちも安心していたのに……私のせいで。
それだけは、いやだなぁ。
「……せっかく、チャンスがきたのに」
ぼそ、と呟くと、悲しくて悔しくて目に涙が滲んだ。