愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



「あ、すみません。起こしちゃいました?」

「……いや、大丈夫だ。少し寝てたか」



無意識に寝落ちしてしまったのだろう。

名護さんは少し眠そうに目元を揉んでから、私の手元を見てハッとする。

その視線にストラップのことだと察した私は、笑いながら彼に差し出そうとした。



「落ちてましたけど、これ名護さんのですか?かわいいですね……」

「触るな!!」



ところがその瞬間、彼は大きな声とともに私の手からストラップを奪った。



これまで落ち着いた姿ばかりを見せていた彼からの、突然の大きな声に、驚き固まってしまう。

そんな私を見て、彼もふと我に返ったようだった。



「あ……悪い、今のは」



すぐにこれまで通りの落ち着いた声に戻る。

けれどそんな反応をされて、さすがに私だって笑って流せない。



なに今の言い方。

そこまで拒むことないじゃない。

私には物ひとつすら触られたくないということ?



夫婦といっても他人扱いでコミュニケーションもとりたくない、挙句に『触るな』なんて……。

ついに私も、胸の奥でブチンとなにかがはち切れた。



「そこまで嫌がらなくてもいいじゃないですか……!」



気持ちは昂り、私は勢いそのままに家を飛び出す。



「あっ……おい!!」



呼び止めるような声が聞こえるけれど、それに振り向くことも足を止めることもしない。



  
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