君との想い出が風に乗って消えても(長編・旧)



 僕はそれ以上、言葉が出てこなくなって、そのまま下を向いてしまった。


「草野くん……?」


 不思議そうな感じで僕の名前を呼ぶ花咲さん。


「…………」


 僕は無言で下を向いたまま。

 どうしよう……このままでは、せっかく仲良くしてくれようとしている花咲さんに申し訳ない……。

 僕は、なんとかしなくてはと思った。

 でも、なかなか言葉が見つからない。

 そういうときに限って見つからない。

 どうしよう……。

 そう思っていたそのとき……。


「……じゃあ……」


 花咲さんが口を開いた。


「……じゃあ……?」


 僕は花咲さんの声に反応するかのように顔を上げた。


 花咲さんは何を言うのだろう……。

 僕は花咲さんが何を言うのか気になった。

 そして……。


「……じゃあ……二人だけのときは『加恋』って呼んでね、優くん」


『優くん』……。


 僕は、そう呼ばれてドキドキした。


『優くん』と呼ばれてドキドキもしたし、嬉しい気持ちにもなった。それと同時に照れてしまって顔が熱くなっているのがわかった。


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