浅葱色の約束。─番外編─




「今日は稽古の日じゃないですか…?お、夫ならもう到着してるかと…」


「…あぁ、今日は用事がありまして。近くまで来たものですから」



玄関を開けてくれ───、まるでそう言うかのような笑顔を向けてくる。


それにしても、どうしてこの家の場所を知っていたのだろう。

少し分かり難い場所にあるのに。
土方さんが教えたのかな…?


でも、この人には私も用があった。


玄関の扉を開けて、目の前に貝殻を差し出す。



「これ…お返しします」


「…気に入りませんでしたか」


「そういうわけじゃないんです。ただやっぱり他の男の人からというのは私も嫌なので…ごめんなさい」



もう1つ言うなら、似合わないと言われたから。

私には似合わない。


シャラン───…。


一瞬、首飾りが揺れたような気がした。

ずっと見守ってくれている彼等が私に「逃げろ」と伝えてくれるみたいに。



「…はぁ、めんどくせえなぁ」


「───っ…!!」



男は乱暴に、私の唇に布を当てる。


意識がだんだん途絶えていった───…。








< 85 / 198 >

この作品をシェア

pagetop