忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~

# 未来side

#未来side

布団に入り、目を閉じて眠ろうとするがなかなか寝付けずにいた。


『多分ホントに来てほしかったのはみぃじゃと思うで…』

唯の言った言葉が頭の中をぐるぐるまわる。
東山君にぎゅっと握られた手の感触を思いだし、手をかざして見た。

試合中の真剣な表情…

こぼれた涙…

さっきから思い出す、いつもと違う東山君の姿。



(もし、もし唯の言うことが本当だったらどうしよう…)
そう思いため息をつく。

「でも、もしも唯の言ったことが本当でも、東山君がうちのことをどう思っているかはわからんけぇ。」

言葉にしてみるが胸のモヤモヤは晴れない。



また ため息をつく。



自分の気持ちは誰にも話していないから、唯にも、亜紀にも相談できない。
特に唯には…とても話せそうな気がしない。

唯と永井君、背の高い二人が並んで笑い会う姿はあまりにも自然で、まわりの人が付き合ってるんじゃないか?と噂するほどお似合いだ。

私もそう思う…辛いけど。


ぎゅっと目をつぶり、布団を頭からかぶる。

ふと、くしゃっとした人懐っこい笑顔の東山君の顔が浮かんだ。いつも元気をくれる笑顔だ。東山君は男の子が苦手な私が少しだけ安心して気軽に話ができる男の子のうちの一人だ。そんな男の子、ほとんどいない。よく考えたら自分にとってとても大切な人のような気もする。

またため息をつく。

「明日からも、今まで通りにできるかなぁ…」

寝返りを繰り返しうつが、まだまだ眠れそうにない。胸のモヤモヤを抱きながら夜はふけていった…。
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