住みますか、住みませんか。


 湯船から、チヒロくんがシャンプーするのを眺める。

 二人でつかれるくらい広くはないから、順番に洗うのだ。

 いや、なんとか一緒に入れなくもないか。


「たまちゃんのとこ……って」

「ん?」

「あのマンション。家賃いくらくらい?」


 なんで、そんなこと聞くんだろう。
 そう思いながらも正確に答えた。


「けっこうするな」

「そうなんだよね」

「気にいってる?」

「え……と。まずまず、かな。大学の頃からいて慣れてるのと、駅とスーパーが近くて便利で住み続けてる」

「俺もそのパターンなんだけど」

「うん」

「もう少し会社の近くに越してもいいかなっていう考えもあって」

「そうなんだ……!」


 それは便利だよね、すごく。

 でもそうなると今よりわたしの家からは、きっと遠くなっちゃう。

 同じ方面のタクシーに乗れないかもしれない。

 初めて宅飲みして、告白されて、週末に過ごしてきた思い出の部屋ともサヨナラってことになる。


「引っ越しって。わくわくしそうだね。引っ越し作業そのものは疲れるだろうし、しばらく馴れるまでは大変なところもあるけど心機一転っていうか」

「そう思う?」

「うん」

「じゃあさ」


 チヒロくんが、シャワーを止めて、髪をかきあげる。

 セクシー、だ。


「家賃浮かす気ない?」
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