冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい

声をかけると、若干躊躇しつつも頷いた彼は、近くにいたメイドにグラスを預けてハルトヴィッヒ王と共に会場を出て行く。正直不安はあるが、邪魔になるよりは黙って待っていた方がよっぽどいいだろう。

ひとりになると、急に心細く感じた。

周りは夜会に慣れた要人ばかり。警備にあたる衛兵や給仕係がちらほらいるため身の危険はないが、まともに知り合いもいない私はきらびやかな周囲を眺めるぐらいしかできない。

時間をつぶすのはどうってことないわ。今日の仕事は、トラブルに巻き込まれないように努めるだけ。


『お嬢さん。あなた、アルソート国の陛下と一緒にいた人だね?』


ぼんやりしていたその時、ふと若い男性に声をかけられた。そばかすが目立つ小麦色の肌に、クセのある茶髪。身なりは貴族っぽいが、振る舞いはなんとなく庶民的に感じる。

言語は隣国のものらしい。なまりがあるのか断片的にしか聞き取れなかった。こちらの名前を尋ねたり質問をするわけでもなく、ただ一方的に言葉の雨を浴びせられている状態だ。

たまに『ハルトヴィッヒ』や『困った』、『いない』などの単語が放たれている。

この人は誰?

もしかして、ハルトヴィッヒ王を探しているのかしら?

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