その男、イケメンエリートにつき冷酷そして甘党
再会の意味は必然


ロビンはしばらく一点を見つめたままだった。
大人になった健太郎は、子供の頃の健太郎のままだったから。

いつも笑顔で、優しくて、ほんわかな温かいオーラに包まれている。
そして、その反面、頭が良くて精神的な強さを持っていた。
子供の時でさえ、年上のロビンはいつも健太郎に守られていた。
学校に行っていなかったロビンに、健太郎は算数や英語や日本の事を教えてくれた。


「ロビンはすごく頭がいいね」


いつもそうやって褒めてくれた。
健太郎に褒められると、何だか不思議な力が湧いてくる。
もっともっと勉強して、健太郎に見合う人間になりたいと思っていた。

でも、それも遠い過去の話。
ロビンは遠い異国で母の死を聞かされた時に、それまでの自分を捨てた。
過去にしがみつく事は、その頃の自分を傷つけるだけだったから。


水商売で得るものは何もなかった。
オーナーから再三頼まれた契約延長も、頑なに断った。
今からでも全ての事をやり直したいだけだった。

法的には何も問題がないはずだったのに、契約満了の前日、その時住んでいた家もオーナーに預けていた貯金も、退職金も全て取り上げられた。

そうする事でロビンの気持ちが変わると思っていたオーナーの元を、その家もお金も全て渡して、何も持たずに体一つで逃げ出した。

自由を手に入れたい。
たくさん勉強したい。
ロビンの願いはそれだけだった。


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