想い出
第三章
 あれから、静かな日々は何日か続いた。

ある日、僕は行きたいところがあるといって彼女と外に出た。

外は真っ暗。まだ六時だというのに、外は闇の中だった。

彼女は僕の一歩後ろを歩き、僕は彼女の目を見ないようにと振り返らずに歩いて行った。

着いた場所は、僕が最初にいた、あの公園だった。

「座ろう」

 僕がベンチに腰を掛けると、彼女は黙ったまま隣に座った。

二人とも気づいたのだ。

僕らの出逢いのさだめを。

「もう、気づいているでしょう。結衣」

 彼女の名前を呼んだ。それでも、彼女は答えなかった。

「僕は、死んだんだ。五年前に。そして僕の名前は、佐野結月。君の幼馴染で恋人でもあった今はもういない彼と同じ名前。僕が死ぬ前。一人だけずっと名前を横で呼び続けた少女がいた。それは僕の恋人だった、深沢結衣っていう君と同じ名前の少女。」

「やめて」

 彼女はうつむいたまま、一言呟いた。

その言葉は僕を止めることなどできなかった。

真実を知った二人は、僕らの運命を受け入れるしかない。
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