LOVE BIRD~生きづらい鳥たちへ
第一章
「またこんなに買っちゃった・・・」

桜は今しがた買ってきた品物を床に広げた。

買っても一度も着ない、使わないものをオークションで売ったり、リサイクルショップへもっていって売ったりしている。

ルブタンのパンプスも、ドゥラメールのクリームも、要らなかった。

桜はほんとうに欲しいものが何か分からなくていろいろなものを買う。
でも結局、手に入れても違うと思う。

桜はふつうの女の子と違う生い立ちのせいか、自分に対する自信がすっぽりと抜け落ちている。
自信なんて、ない。
どこに売ってるのかも分からない。
女の子の自信は、男が持っているらしい。
そのなにかを貰うと、女の子は自信を持てるっていう。

でも、そんなの、くれた男は一人もいなかった。
いつも探してるけど、それっぽく見える男がいても、結局はニセモノだ。

桜は過食したくなった。

近所のコンビニは気まずいから、ちょっと遠くのコンビニへ行く。

家を出ようとすると、スマホが鳴った。

《今から常連のKさんとプレイできる?》

桜は「会員制SMクラブ」の女王様をやっている。
ほかに、何をやってもダメだった。

桜の見た目はふつうと違う。
顔の小ささも、目の大きさも、スタイルの良さも飛びぬけ過ぎていた。

だから、どこへ行っても馴染めない。

そんなことをやっているうちに、生きづらくなって、死のうと思ったことがあった。
実際に、死のうとした。


・・・でも助かってしまった。

神様ってひどいよね。
いるのか知らないけど、神様がいるとしたら、ひどい人だと思う。

生きづらい世の中に、こんな見た目で放りこんでおいて、
死のうとするのも許さないって。

自殺未遂をした桜は、精神病院に入院させられた。


「境界性人格障害」

なんの境界なんだか知らないけど、何それ。

先生は言った。

「人に迷惑をかける人間のことを、そう呼びます」

迷惑をかけない人間なんかいるの?

と思った。

でも、相手にしてもしょうがない。

医者なんか、自分が絶対と思ってるような種類の人間だから。

病院では四か月も入院させられた。


「人格障害の原因を探す」とかなんとかで。

要するに実験ってことでしょ。

退院した桜には、たくさんのクスリが処方された。

でも、飲んでない。

飲む意味ない。

だって、飲んでもこの世の虚しさは変わらないのだから。

桜はコンビニに行くのにメガネとマスクで変装をした。

ナンパ、客引きがすごいから。

新宿の繁華街の横をそそくさと抜ける。


「・・・ねえ!」

男の声がする。


やっぱりだ。

めんどくさい。




「どういう意味?」
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