ぜんぜん足りない二人
 真山優子、十六歳。
 黒髪黒目で化粧っ気の無い顔をしている彼女は、見た目通り頑固で正義感が強い。そのため、基本同年代とソリが合わない。

 小五の頃、いじめっ子を言葉で制裁し、いじめられっ子に手を貸すついでに「もっと自己主張しなよ! そんなんだからいじめられるんだよ、分かってるの!?」と説教をしたエピソードには、彼女の性格がよく現れている。

『流石にこれはちょっと良くないことをした。反省しています』とは後年の優子の言である。


 そんな優子を受け入れてくれる寛容なコミュニティは、残念だから今まで一つたりとも存在しなかった。
 古き良き“学級委員長”イメージの体現者である優子は、『別にどこのグループに所属しなくても良い。寧ろ1人は楽』とまで思っていた。だから決して自分の態度を改めなかったし、非難してくる奴らを纏めて「バカなやつら」とまで思っていた。

 そこで困るのは親である。
 優子の家庭は少し複雑だった。金銭に余裕はあったけれど、それとは別の部分で沢山の問題を抱えていたのだ。

 だからこそ優子は決意する。

『とうとう転校までキメちゃったんだから、これ以上両親に迷惑はかけられない。私は猫をかぶらねば……』と。
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