シャンプーくん
夕焼け空。
地面に敷き詰められたコンクリート。




強がりな歌を聴きながら、たまに近所のおじいちゃんが犬の散歩に通るくらいの帰路を早足で辿っていた。


シャンプーくんしか、なんて言いつつ実は引っ越してきたイケメンくんの事が気になっていたりする。



悔しいけど。




一途になるのは難しい。



画面の中の君に一途になれるほど、夢見る少女ではなかったようだ。





マンションのエントランスに着くと、オートロックの機械の前で困ったような仕草をした大学生くらいの男の人がいた。

 


マスクにメガネで顔はよくわからなかったが、どことなくシャンプーくんに似ていた。





「あの、どうしました?」




「あの、鍵を部屋のドアに差しっぱなしにしてきてしまったみたいでオートロック開けれないので開けてもらえませんか?」





マスクをしているからか、少しこもった声。
低いけど、渋すぎない声。
優しいけど、鉄のような硬さを感じさせる声。



シャンプーくんに似てる。



それだけで、わたしはこの人について行きたくなってしまった。
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