ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「お疲れ様です。加藤先生。
今、書類を8階へお持ちしようと…」

「平田さん!
何、君たち、逢引きかい?」

逢引きって!

「はい。
灯里が可愛くて、ついつい行く手を阻んでしまってました。」

彬良! 何言っちゃってるの⁉︎

「あー、わかるわかる。
あ、僕もね、奥さんは病棟ナースだったんだ。
もう、隙あれば隠れてイチャイチャしてたなぁ。懐かしいよ。若いっていいよね。」

まあ、ほどほどにね〜
といって、書類を取り、行ってしまった。

ゆ、緩くない⁇
え、そんなものなの⁉︎

「あー、忘れてた。
婚約したんだって? おめでとう。
やっとだね。
何年かかっちゃってるの。
式にはもちろん呼んでくれよ。
僕、スピーチより歌の方がいいなぁ。」

……え?
エェ⁉︎

「その時は宜しくお願いします。
またご報告します。」

エェ⁉︎

バタン

行っちゃった。

「あ、彬良⁇
あれ何? なんで知ってるの? 」

「……お前…本当に知らなかったのか。
灯里がここに入職した時から、俺の嫁として認識されてたんだ。
健心も知ってるぞ?」

エェ‼︎
健心⁉︎

「俺が研修で戻れなかったのと、ぐずぐずしてたのとで、院内の先生方からもヘタレ扱いだ。
…まあ事実だけど。」

……麗先生が言ってた事って、事実だったんだ…。

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