ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
食事が始まると、みんな好き放題。

ほぼ全員が、彬良を弄り倒す。

確かに、長年のヘタレぶりは、家族全員をハラハラさせたことだろう。

でも、振り返ってみれば、廣澤に入職してからの時間はわずか3週間。
彬良にしては、上出来だと評価された。
まあ、兄夫婦の介入がなかったら、ここまで早く事は進んでなかったように思うけど。
そこは黙っていよう。

式は秋頃と大体の目安で決め、私のマンションへの引越しを先に決めることになった。

実は彬良、大学時代の6年間プラス研修医の2年間、寮に入っていたのだ。
よくもそんなに長く置いてもらえたものだな、
と思う。
彬良の入っていた寮は、朝食と予約すれば晩御飯も寮母さんが作ってくれるという。
自炊の出来ない彼には外せない環境だった。
頼み込んで、2年延長して寮生活を送ったらしい。

それをわかっているご両親に、同棲を懇願された。
もちろん、私だって彬良と早く暮らしたい。
健心のことは心配だけど、母もいる。
距離的には電車で2駅と近いので、すぐに様子も見に行ける。
恵まれた環境だ。

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