ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
しかし、同棲するにあたって健心が、
『外聞もあるだろうから、ちゃんと籍を入れて実家を出したい』と言い出した。
健心は最近、父親のような物言いをよくするんだよね…。
そうしたら、義姉となる麗先生まで、
『住民票を移すなら、姓名変更もしてしまった方が合理的よ』と言い出した。
まあ、どちらの言い分ももっともで。

結局、直近の大安吉日を選んで入籍することになった。

ゴールデンウィーク中に引越すことが決まり、それまでに家具の選定。
搬入されるまではちゃぶ台で過ごすしかない。
でもいい。
彬良が入居と共に購入した、唯一のまともな家具、キングサイズのベッドはあるから。
2人でゆったり寝ることができる。


◇◇


顔合せから6日後、私は廣澤灯里になった。

早朝から2人で役所の時間外受付に行き、婚姻届を提出してきた。
紙を一枚提出しただけで、その瞬間から名字が変わる。
嬉しいというより、不思議な感覚だった。
でも、隣にいる人は、私の旦那さまなんだと思うと、やっぱり嬉しい。
私の大切な人。
彬良とずっと一緒に生きていく。



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