不倫の代償
あの夜 抱かれるまで
博幸は 特別な存在では なかった。
そっと 見つめていたとか。
密かに 憧れていたとか。
博幸に 振り向いてほしくて
何かをしたことも ないし。
博幸が 私を 女性として 思っていたことにも
まったく 気付いていなかった。
本当に 私は 仕事を覚えることに 夢中だったから。
あの夜 初めて見せた隙に
博幸は 見事に 入り込んだ。
捕まえてしまえば 私を 夢中にすることなんて
大人の博幸にとって 簡単なことだったと思う。
そもそも私は 一途な性格だから。
全ての情熱を 博幸に向けた。
それが 博幸を 夢中にさせることだって
私は 気付かないまま。
真っ直ぐに 求める私を
博幸は 愛しく 思ってくれた。
新鮮だったのかもしれない。
多分 博幸は 失くしたものだから。