チヤホヤされてますが童貞です
恥ずかしい。

顔を見ることも見られることも…。

俳優業が向いてないと心から思っているのだが、今更後に引き下がれない今日この頃。

CM撮影、雑誌の取材、ドラマ出演に映画の主演。
幸せなことにテレビに引っ張りだこ。
最近は忙しすぎてあまり眠れていない。




「あの…」
「はい?」

1つ年上と思われる凛。挨拶を終えて逃げるように楽屋を後にしようと試みたところ急に話しかけられて綾斗は立ち止まった。

「ハンカチ、落としましたよ?」
「?」

 
床を見ると、この間の誕生日に友人が冷やかしながら渡して来たハンカチが目に入る。

『女の子が泣いた時にすぐに差し出せるようにハンカチ持っておけよ〜笑笑』

彼女が居ないってことも、つくる気すら起きないほどウブなことも、全て把握した上での嘲笑まじりな発言だった。

(もらったからには使うけどさ…)

「ありがとうございます」

落としたことを教えてくれた凛に感謝の気持ちを伝え、しゃがんで取ろうとする。

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