チヤホヤされてますが童貞です
ドクン、ドクン、と強く打ち鳴らす鼓動を感じると驚きで反射的に顔を上げる。
「撮影で何回かハグしたことあって…毎回こんな感じで落ち着きがないんだけど……その…今はなんか……」
「緊張してる凛を見て…ドキドキうるさい…」
ピッタリとくっつきたい衝動は性欲のせいだろうか。
そんな疑問が脳裏に浮かんだが、すぐさま取っ払い、その手首を引いて凛の体を抱きしめた。
「……ちょ…………うぅ…」
ぷしゅーっと音がしそうなほどに赤面している自分の顔を見られないように、綾斗は強く凛を抱きしめ、凛は綾斗の身に纏うTシャツに顔を擦り寄せた。
「………ハグって…ストレス解消に良いらしい…。この間出たバラエティで聞いた。」
「見たよ。幸せ分泌ホルモン?的なのが出るって言ってた。」
「………Win-Winだね。」
「………うん…」
伝わる心地の良い体温を逃さぬよう、抱きしめる言い訳を並べる。
「……綾斗…」
名前を呼び、綾斗の背中に手を回した。
「なに…?」
「……ファンデーション付いたらごめん…」
予想の範囲外な言葉にクスクスと綾斗の顔が綻ぶ。
「いいよ。」
そう言って肩に顔を埋める。
香る同じ柔軟剤の匂いに安心感を覚え、ゆっくりと凛は目を瞑った。