チヤホヤされてますが童貞です
ぎこちない動きで綾斗は手を広げる。

「ふっ…はは! ロボットみたい!」
「…っ…恥ずかしいからさっさとやろ…」

綾斗の動きがツボに入って笑う凛だが…。

「…待って……心の準備が…」

笑いが止むと急激な緊張に駆られた。

「芝居で『あざとい女』演じてるのに…? 何を今更…」
「だって……なんか…綾斗は…違う…から……」

最初の意気込みは何処へ。

役に入りこむことさえできれば気にせずにスキンシップができる凛だが、いざ、となると手も足もでない。

「……俺は違うって………さっき俺のこと『綾斗っていう性別』って言ってたけど……何が違うの?」
「なんか…わかんない…」
「オカマっぽい? 女々しすぎて」

苦笑いに似た作り笑いで訊く綾斗の質問に、勢いよくブンブンと首を横に振った。

「わかんないけど……緊張して胸が苦しい…」

そう言葉を発した後、下を向いて火照った頬を冷ますように両手で顔を覆っている。
そんな凛の手首に手を伸ばして、グイッと引っ張り、

「俺だって同じくらい…緊張してるよ…?」

そう言って、トンッと凛の手を胸に当てた。

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